週間腸活部 第7回

酪酸菌ってどんな菌?

腸内細菌の中には、「酪酸」という物質を作る菌がいます。
近年、腸の健康との関わりから注目されている酪酸菌。
今回は、酪酸菌と酪酸についてご紹介します。

酪酸菌とは?

酪酸菌とは、腸の中で「酪酸」を作る腸内細菌の総称です。

「酪酸菌」という名前の一種類の菌がいるのではなく、 酪酸を作るさまざまな種類の腸内細菌をまとめて、このように呼んでいます。

これらの菌は、食物繊維など大腸まで届いた食品成分を利用して活動しています。

今日のポイント:
酪酸菌は、腸を元気に保つために大切な「酪酸」を作る細菌です。

酪酸ってどんなもの?

「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質のひとつに酪酸があります。

私たちが食べた食物繊維などの一部は、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届きます。 それを腸内細菌が利用して、酪酸などが作られます。

食物繊維など 酪酸菌 酪酸

つまり、私たちの食事と腸内細菌の働きが組み合わさることで、 腸の中に酪酸が生まれているのです。

酪酸は何に役立つの?

腸の健康を支えるさまざまな働きがあることが明らかになっています。

腸の細胞のエネルギーになる 酪酸は、大腸の内側をつくる細胞が利用する大切なエネルギー源のひとつです。
腸のバリアを支える 腸の内側には、不要なものが体内に入りにくくする仕組みがあります。 酪酸は、この腸のバリア機能を保つことに関わっています。
免疫の調節に関わる 酪酸は、免疫力を調節する制御性T細胞に作用して、ちょうど良い免疫力を保つことに関わっていると考えられています。
腸内環境を支える 酪酸を含む短鎖脂肪酸は、有害菌の増殖を抑えて有用菌が活動しやすい腸内環境にすることに関わっています。
ワンポイント:
酪酸は、腸の細胞にとっての「エネルギー」であると同時に、 腸の環境を支える物質でもあります。

酪酸菌にも「ごはん」があります

食物繊維やレジスタントスターチなど、大腸まで届く成分が、 酪酸菌やほかの腸内細菌の「ごはん」になります。

酪酸の生成を刺激してくれる食材の例としては、もち麦や大麦、ブラン(ふすま)のシリアル、豆類、玉ねぎ、ゴボウ、バナナ、リンゴ、かんきつ類、はちみつ、冷えご飯など。

腸内細菌は助け合っています

酪酸菌の中には、食物繊維を直接利用して酪酸を作るものもいれば、 ほかの腸内細菌が作った物質を利用するものもいます。

例えば、ビフィズス菌はオリゴ糖などを利用して、酢酸や乳酸を作ります。 一部の酪酸菌は、それらを材料として利用し、酪酸を作ることがあります。

食物繊維やオリゴ糖 ビフィズス菌など 酢酸・乳酸 一部の酪酸菌 酪酸

このような腸内細菌どうしの「食べ物の受け渡し」は、 クロスフィーディングと呼ばれます。

ちなみに、食物繊維にもいろいろな種類があって、菌によって好き嫌いがあります。 いろいろな食材を幅広く食べること、つまりバランスのよい食事が、いろいろな腸内細菌に「ごはん」を届けることにつながります。

ワンポイント:
腸の中では、一つの菌だけが働いているのではありません。 さまざまな菌が物質を受け渡しながら、腸内環境をつくっています。

酪酸菌入りの整腸剤もあります

腸内環境を整えることを目的として、酪酸菌を配合した整腸剤(医薬品や医薬部外品)も市販されています。

整腸剤を利用するときは、パッケージや説明書に書かれている用法・用量を守ってください。詳しくは医師や薬剤師に相談してくださいね。

酪酸菌だけが大切なのではありません

酪酸菌は、健康との関わりが期待されている腸内細菌の仲間です。 しかし、腸の中では、ビフィズス菌をはじめとする多くの菌が関わり合っています。

酪酸菌だけを増やそうと考えるよりも、 さまざまな腸内細菌が活動できるように、 多様な食品を取り入れることが大切だと考えられます。

今日の腸活部クイズ

Q. 酪酸菌が腸内で作るものは、どれでしょう?

① 酪酸
② コラーゲン
③ カルシウム
答え:① 酪酸
酪酸菌は、食物繊維などを利用して酪酸を作る腸内細菌の総称です。 ただし、利用できるものや酪酸の作り方は、菌の種類によって異なります。

今日の一冊

『酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる
~今、話題の酪酸・酪酸菌のすべてが分かる!~』

著者:内藤 裕二
出版社:あさ出版

「酪酸菌はなぜ注目されているの?」という疑問に、 やさしく答えてくれる一冊です。

腸内細菌の基礎から、酪酸菌の働き、食生活との関係まで、幅広く紹介されています。 「酪酸菌について、もう少し詳しく知りたい」という方におすすめです。

もっと詳しく知りたい人へ

今回は、酪酸菌と酪酸の働きを紹介しました。

実は、酪酸を作る菌には、 Faecalibacterium prausnitziiAgathobacter rectalisRoseburia属、 Anaerostipes属など、さまざまな種類があります。

それぞれの菌は、利用できる食物繊維や代謝の仕組みが異なります。 また、長寿、免疫、腸のバリア機能との関係についても、多くの研究が進められています。

今後の「エキスパート編」では、論文も交えながら、 酪酸産生菌の種類、酪酸を作る仕組み、クロスフィーディング、 健康との関係などを詳しく紹介する予定です。

私たちが食べた食物繊維は、腸内細菌の力で「酪酸」へと変えられます。
毎日の食事は、酪酸菌を含む腸内細菌への「ごはん」でもあるのです。
自分の食べたごはんが、おなかに反映されたかどうか、気になりませんか?